2013年5月16日木曜日

小原さんへ   【遠矢】

こんばんは。
遠矢です。

今週はゼミにあまり参加できなくて申し訳ない。
小原さんへのレポートだけれど、もう一個のゼミのメーリスに流してしまってました。
力んで書くと言っていたのにすまない。
みんなにも読んでもらいたいからブログに載せます。




小原さん、こんにちは。

レポートという形式だとすこし書きにくいので、額田で出会った小原さんや、清水さん、寿太郎さん、太田さん、みなさんの顔を思い出しながら手紙のように筆を進めたいと思います。

額田滞在から三週間ほど経ちました。
額田で感じたほてりのような熱気はだんだんと冷めてきて、皆が冷静な姿勢で額田を考えられているように感じられます。

東京に戻ってきてからの一週間は喧嘩のようでした。ゼミ生各々が額田で感じ取ったことが各々違っていたので、それをまとめあげていくことが出来ませんでした。
小原さんから伺ったお話、市役所の方のお話、地元の方々のお話。どのお話も興味深く勉強になったのですが、立場も違えばスケール感も違うすべてを吸収しようとしすぎてしまい、ゼミ生内で消化不良を起こしてしまっていたように思っています。
お互いがお互いの言葉のスケール感の違いを理解し、尊重するのにすこしの時間が必要でした。

今ではゼミ生みんなが同じスケールを共有できているように思います。そして、そのなかでキーワードとなる言葉が浮かび上がってきました。
“人工林”、”猪垣”、”寿太郎さん”
この三つが大きなキーワードであり、今後の柱になるのではないかと、僕自身は感じています。

林業、人工林の現状は、天使の森を案内していただくことで垣間みることができました。
日本の林業は僕らが思っている以上に、危機的状況に追い込まれているということを認識しました。そして、林業の危機的状況を伝えることに主眼を置きたいと考えているゼミ生もいます。珍田がその一人です。
彼は人工林の状況を視覚的に訴えることのできるアート作品を作り出し、行政からの補助金を導入したいと、最初のアイディア出しのときに言っていました。スケールは大きいですが、取り組みがいのあるアイディアだと思っています。
この次の意見は僕個人の感想です。健康な森がどういったものなのかを知らないので、天使の森を”自然ではない人工林”としてではなく、”シンプルな木々の要素で構成されている空間”と感じました。そしてその空間は美しく、厳かさも持ち合わせていました。
森や木々のことを深く知っている人々にとっての問題点が、何も知らない美大生にとっては美しいものに感じられる。この認識の”ずれ”は、上手く掘り下げていけばとても面白いものになると思います。

次のキーワードは猪垣です。
額田滞在中に僕らがもっとも長く時間を過ごしたのは猪垣周辺でした。僕らの意識が猪垣に注がれたのは、地元の人々の猪垣への思いを感じ取ったからのような気がしています。万足平を考える会の活動を聞くにつれて、僕自身の猪垣への思いも強まりました。
東京で行われる保存活動などはどうしても規模が大きくなってしまうため、活動に携わっている人が見えにくい印象があります。しかし、額田の猪垣を保存しようと考えている皆さんの表情はくっきり見えてきました。地方の小さな活動だからと切り捨てて考えてしまうのも簡単ですが、土地や場所のことを深く考えることが出来る、素敵な活動だと感じています。
しかし、万足平を考える会会長の河合さんに、「猪垣と猪垣を守ろうとする活動は素晴らしいですね」とお伝えしたときに、「本当かい?年寄りの小さな活動なのに、若い人がそう言ってくれるのはうれしいね」と漏らされました。
その言葉を聞いて少しの違和感と、悲しさを覚えました。
自分の生まれ育った土地を愛し、土地の魅力を残そうとする行動に、とても強い憧れがあります。けれど、失礼な言い方をするのであれば、その活動を卑下したような発言をしてしまうのはどこか寂しいです。
土地を愛し、土地のための活動がもっと誇り高くなってほしい。二十三の若造ながら、そう強く願っています。そして、その思いはゼミ生の藤村、甲谷と共有できていると思っています。

最後は寿太郎さんです。
額田滞在二日目に、廃校となった大雨川小学校で寿太郎さんとお会いしました。
身振り手振りや擬音語を歌うように用いて熱心に喋る姿には、明るいエネルギーが満ちていました。その姿に圧倒されて、ゼミ生は言葉を挟むことも出来なかったです。
自分のなかの思いをあそこまで力強く言葉に乗せられる人は少ないでしょう。
「丸太に縦ズミを入れるのは簡単なんだよ。はじっこ持ってピッと打てば大丈夫だろう。横ズミが難しいんだ。こうやって指先で糸をキリキリキリっと捩って、ビシッと放つんだよ」
気持ちのよい昔話が耳に残っています。
そんな寿太郎さんに惹かれ、惣坊が寿太郎さんの顔をスケッチしていたのも、印象に残っています。「額田に住む人に興味がある。人に焦点を当てたい」と惣坊は言っていました。
また、寿太郎さんはクレバーな方でした。
寿太郎さんのアイディアでは、今までは大雨川小学校で水車小屋やロッジハウスをつくったけれど、廃校になった小学校を拠点にイベントをひらけばいいと思っているそうです。
そのアイディアは、荒井の”廃校を拠点に地元の人が集まれる場所を作りたい”といった意見や、山口の”廃屋を利用して地元の人に集まってもらいたい”と言ったアイディアと合わせて膨らませていくと面白いと思っています。

このような大きな枠組みですが、ゼミ生の意見が混ざりあってきています。
個人の課題とは異なった頭と身体の動かしかたなので悪戦苦闘はありますが、仲間意識を感じています。
そして、額田の皆さんに恥ずかしくない提出が出来るように奮闘したいです。

長々となってしまいましたが、額田滞在中はお世話になりました。地元の方々の顔がお一人ずつ見える距離感で滞在でき、うれしく思っています。
また是非額田に伺わせてください。
失礼します。

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